「パキスタン人材を建設現場で採用したい」という問い合わせが急増しています。50℃超の現場で鍛えた体力・中東の建設現場での実務経験・高い定着率——パキスタン人材が建設分野に向いている理由は明快です。しかし実際に動き出そうとすると、壁にぶつかります。
特定技能「建設」は他の16分野と異なり、CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録義務・JAC(建設技能人材機構)への加入義務・独自の業務区分制限という3つの追加義務が存在します。この制度的ハードルを正確に理解せずに動き出すと、手続き漏れ・採用の遅延・場合によっては不法就労リスクに直面します。
この記事では、建設×特定技能の制度実務を一から整理した上で、パキスタン人材採用で実際に起きる失敗パターンと、建設分野に強い登録支援機関の選び方を解説します。
特定技能の全16分野の中で、「建設」だけは国土交通省が別途設けた3つの追加義務を負います。この3点を理解していないまま採用を進めると、手続きが途中で止まったり、採用後に法令違反状態になるリスクがあります。
特定技能「建設」で外国人を雇用するすべての建設企業は、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)またはJAC正会員の建設業団体に加入する義務があります。JACへの加入なしに特定技能建設人材を雇用することはできません。加入手続きには1〜2ヶ月かかるため、採用活動と並行して早期に着手が必要です。
特定技能「建設」の外国人材は、就労開始までにCCUS(建設キャリアアップシステム)への技能者登録が義務付けられています。CCUSはICカードで就労履歴・資格・技能レベルを管理するシステムで、企業側も事業者登録が必要です。登録から交付まで2〜4週間かかります。
特定技能「建設」では、同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払うことが義務付けられています。さらに、就労期間中の昇給が義務化されており、毎年の賃金改定状況を国土交通省に報告する必要があります。「外国人だから安い賃金でよい」という考え方は建設分野では通用しません。
建設分野特定技能外国人を雇用する企業は、国土交通省への定期報告(受入報告書・賃金に関する報告書など)が義務付けられています。出入国在留管理庁への報告書に加えて、国交省向けの別途書類が発生するため、事務負担は他分野より大きくなります。
「採用が決まってから手続きを始める」では間に合いません。JAC加入(1〜2ヶ月)+CCUS事業者登録(2〜3週間)+CCUS技能者登録(2〜4週間)の合計で、最低でも2〜3ヶ月の準備期間が必要です。採用活動の開始と同時に、JAC加入・CCUS登録の準備を並行して進めることが採用成功の第一条件です。
特定技能「建設」には現在19の業務区分があります。採用した外国人材は、届け出た業務区分の業務にしか従事できません。業務区分を誤ると不法就労になるリスクがあるため、自社の主要業務がどの区分に該当するかを事前に正確に把握することが必須です。
パキスタン人材は中東(サウジアラビア・UAE・カタールなど)の建設現場での実務経験者が多く、特に以下の区分との親和性が高いとされています。
| 業務区分 | 主な作業内容 | パキスタン人材との相性 |
|---|---|---|
| 土木 | 道路・河川・ダム・トンネルなどの土木工事全般 | ◎ 中東での土木経験者が多い |
| 建築 | 住宅・ビルなどの建築工事全般(大工・型枠・鉄筋など含む) | ◎ 建築経験者が豊富・体力面も高評価 |
| ライフライン・設備 | 配管・電気・空調・衛生設備工事 | ○ 中東のプラント現場経験者に強み |
| とび | 足場の組み立て・解体・高所作業全般 | ◎ 高所作業への適応力が高い評価 |
| 仕上げ | 左官・タイル・塗装・内装仕上げ | △ 経験者は少なめ。入社後の研修が有効 |
| 解体 | 建物・構造物の解体工事 | ○ 体力・持久力が活かせる分野 |
例えば「建築」区分で採用した外国人を「土木」の作業に従事させると不法就労助長罪に問われる可能性があります。2023年以降、建設分野での業務区分違反の摘発事例が報告されており、国土交通省・出入国在留管理庁の合同調査も強化されています。採用前に主要業務を登録支援機関に伝え、正確な区分で申請することが必須です。
パキスタン人材が建設分野に向いている理由は、単なる人手不足の代替ではありません。建設現場固有の厳しさに対して、構造的に強みを持つ人材が多いという実態があります。
サウジアラビア・UAE・カタールなどの中東諸国では、パキスタン人が建設労働力の中核を担ってきました。超高層ビル・石油プラント・インフラ工事——日本の建設現場と類似した大規模工事での実務経験を持つ人材が多く存在します。特定技能の技能試験免除要件(技能実習2号修了)に頼らず、実務経験者を即戦力として採用できるルートが整いつつあります。
パキスタン北西部・パンジャーブ地方の夏季気温は50℃近くに達する地域もあります。そうした環境で農業・建設・製造業に従事してきた人材は、日本の夏場の屋外作業や重筋作業への耐性が高いと現場から報告されています。体力・持久力という観点で、日本の建設現場の要求水準に対応できる素地を持つ人が多い。
「家族のために安定した収入を得る」という強い動機を持つパキスタン人材は、職場環境への不満があってもすぐに辞めることが少ないと、受入企業から評価されています。イスラムの教えに基づく誠実さ・義理堅さも職場の信頼を築く要素です。中東での賃金未払い・不当待遇を経験した人材が「日本では正当に評価されたい」という思いで来日するケースも多く、これが高い定着率につながっています。
建設分野の特有ルールとパキスタン文化への理解不足が重なることで起きる失敗パターンを3つ整理しました。いずれも「登録支援機関選び」と「事前準備」の段階で防げたものです。
採用が決まってから手続きを開始したため、CCUS技能者登録の交付が就労開始日に間に合わなかった。「とりあえず現場に入れてから登録を進めよう」と判断したところ、国土交通省の建設現場立入検査でCCUSカード未携帯が発覚。書面指導を受け、改善報告書の提出対応に追われた。結果として担当者の工数が大幅に増え、外国人材本人も精神的なストレスを負った。
🔍 真の原因:登録支援機関がCCUS登録のスケジュール管理を採用企業任せにしていたラマダン(イスラム断食月)の期間中も通常通りの重筋作業シフトを組んだところ、断食中の脱水・低血糖による体調不良が複数名に発生した。作業ミスが増加し、品質検査でやり直し工事が発生。工期が2週間遅延した。ラマダンの日程は毎年変わるため、年間採用計画にカレンダーとして組み込む必要があったが、登録支援機関からの事前案内がなかった。
🔍 真の原因:紹介会社がイスラム文化・ラマダンへの現場対応を事前に企業に説明していなかった「建設業なら建築区分でいいだろう」と判断して申請したところ、実際の主要業務が道路工事・舗装工事(土木区分)だったことが後から判明。そのまま就労を続けると業務区分違反になるため、在留資格変更申請をやり直すことになった。変更申請期間中の2ヶ月間、当該外国人材が現場に入れない状態が続き、工期と人件費に大きなダメージが生じた。
🔍 真の原因:登録支援機関が自社の主要業務を詳細に確認せず、区分選定が表面的なヒアリングで終わっていた建設×特定技能の採用手続きは、通常の特定技能フローにJAC・CCUSの工程が加わるため、全体で4〜6ヶ月の準備期間を見ておく必要があります。登録支援機関と早期に連携することで、並行作業によってこの期間を短縮できます。
採用を決意した段階で即座に動き出します。登録支援機関との契約締結、JAC(または正会員団体)への加入申請を並行して開始。JAC加入の審査・承認には1〜2ヶ月かかります。ここで出遅れると全体スケジュールが遅延します。
自社のCCUS事業者登録がまだの場合は、JAC加入申請と同時に進めます。事業者登録の審査・承認には2〜3週間かかります。すでに登録済みの建設業者はこのステップをスキップできます。
自社の主要業務を登録支援機関と詳細にすり合わせ、正確な業務区分を確定します。その上で求人票を作成し、パキスタン人材とのマッチングを開始。面談・選考・内定まで1〜2ヶ月が目安です。
内定が決まった外国人材のCCUS技能者登録を開始します。パスポート・写真・登録書類の収集から交付まで2〜4週間かかります。就労開始日までにCCUSカードが交付されるよう、逆算してスケジュールを組みます。
在留資格認定証明書(COE)の申請から交付まで標準1〜3ヶ月かかります。交付後、パキスタン現地の日本大使館で査証(ビザ)を申請。ビザ発給から入国手続き・出入国在留管理庁への届け出まで登録支援機関が一括でサポートします。
就労開始後も、国土交通省への定期報告(受入報告・賃金報告)が継続します。出入国在留管理庁への3ヶ月ごとの定期報告と合わせて、建設分野は報告書類の量が他分野より多くなります。登録支援機関が書類作成を代行できるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
建設分野の特殊性(JAC・CCUS・国交省報告)とパキスタン文化への対応力、この両方を持つ登録支援機関は多くありません。以下の3点を問い合わせ時に確認することで、対応力の差が明確に浮かび上がります。
「JAC加入は自社でやってください」「CCUSの登録タイミングは企業側で管理してください」という機関は、建設分野の実務に慣れていない可能性があります。JAC加入の申請代行・CCUS技能者登録の書類収集から交付管理まで一括で担い、就労開始日から逆算したスケジュールを提示できる機関を選んでください。
「建設業なら建築区分」という表面的な判断では業務区分ミスが起きます。現場写真・施工事例・発注書類などを確認した上で、実際の業務が19区分のどれに該当するかを正確に判定できる専門知識がある機関かどうかを確認してください。業務区分の判定ミスは在留資格変更申請のやり直しという最悪のシナリオに直結します。
パキスタン人材の多くはイスラム教徒です。ラマダン(断食月)の工期・シフト配慮、1日5回の礼拝時間の確保、ハラール食への配慮——これらを入社前に受入企業に説明し、現場ルールを整備できるよう支援している機関かどうかを確認してください。文化的配慮なしに採用すると、体調不良・定着率低下・日本人スタッフとの摩擦が発生します。
上記3基準への対応が確認できた代表例として、当サイト調査の範囲でSkywork株式会社の特徴を紹介します。ランキングでの推薦ではなく、建設分野での実務対応力という観点での参考情報として掲載します。
パキスタン人材の建設現場での即戦力性は、中東での実務経験・体力・高い定着率という3点で裏付けられています。しかし建設分野の特定技能採用は、CCUS・JAC・業務区分という他分野にない3つの制度的ハードルがあり、「とりあえず採用してから手続きを進める」という進め方では必ず躓きます。
JAC加入(1〜2ヶ月)・CCUS登録(2〜4週間)・在留資格申請(1〜3ヶ月)を逆算したスケジュール管理と、業務区分の正確な判定、ラマダン・礼拝への現場配慮——この3点をすべてカバーできる登録支援機関を選ぶことが、建設×パキスタン人材採用の成否を決めます。
- 特定技能「建設」はJAC加入・CCUS登録・国交省報告という他分野にない3つの追加義務がある
- 建設19区分の業務区分ミスは不法就労リスクになる。入社前の詳細ヒアリングが必須
- パキスタン人材の強みは中東建設経験・体力・明確な就労動機による高い定着率
- ラマダン対応・礼拝時間確保・ハラール食配慮を事前に整備しないと定着率が下がる
- 採用開始と同時にJAC加入・CCUS登録を始めないと就労開始が3〜4ヶ月遅れる

