- 特定技能の対象分野は2024年3月に4分野(自動車運送業・鉄道・林業・木材産業)が追加され、従来の12分野と合わせて16分野に拡大
- 多くの分野で「技能試験」と「日本語試験」が要件(技能実習2号良好修了者には一部免除あり)
- 1号は在留期間が通算最大5年、2号は熟練水準が必要で分野ごとに移行可否が異なる
- 拡大の中心は人手不足が深刻な産業・インフラ領域(物流・運送・林業など)で、事業者の採用チャネルが広がる
- 定着には支援体制(住居・オリエンテーション・生活相談等)と日本語・試験対応、キャリア設計を含む中長期の運用設計が重要
- 今後の注目点:2号移行可能職種の拡充、試験・日本語評価の運用改善、各分野の告示・運用改定の動向
はじめに
近年、「特定技能」制度の対象分野が大きく広がっており、日本の人手不足対策の柱のひとつとして注目されています。2024年3月の閣議決定で、自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が新たに加わり、制度の適用対象は当初の12分野から16分野に拡大しました(2025年9月時点)。日本の人手不足対策の柱である「特定技能」制度が、着実に進化しています。本記事では、分野拡大の背景、制度の狙い、今後の展望を整理します。
なぜ分野拡大が進んだのか
- 構造的な人手不足の長期化。生産性向上や国内人材確保の努力を重ねてもなお人材確保が難しい分野が対象で、政策としての受入れ規模も見直されてきました。
- 旧来の技能実習では帰国前提・期間制約などから長期戦力化に限界があり、一定の技能と日本語力を備えた即戦力を受け入れる枠組みとして特定技能が整備・拡充されています。

分野拡大は日本社会にとって「人材確保の実験場」でもあります。制度を活かしつつ、より良い定着やキャリア形成の仕組みを一緒に作っていく視点が必要だと感じています。
いま対象となる16分野(概要)
追加分野(2024年決定)
- 自動車運送業 2) 鉄道 3) 林業 4) 木材産業。これらの分野は、人流・物流や基礎素材の安定供給など、経済・生活インフラの維持に直結しています。
既存の12分野(抜粋)
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業——これらは従前から対象で、分野ごとに技能評価試験(技能)と日本語試験(JFT-Basic等 / JLPT等)が基本要件です(技能実習2号良好修了者は一部免除あり)。



宿泊や外食業も対象になったことで、慢性的な人手不足に悩む多くの事業者さんが、この制度を活用して人材確保を検討するきっかけになりそうですね。特に観光需要の回復とあわせて、今後ますます注目される分野になりそうです。
1号と2号:移行可否の大枠
- 特定技能1号:在留は通算最大5年。分野ごとに技能・日本語の要件があり、支援計画に基づく生活・就労支援が義務付けられています。
- 特定技能2号:熟練水準の技能が要件で、在留更新の上限はなく、家族帯同などの選択肢が広がる枠。移行できる分野は限定されており、最新の分野別運用で順次整理・拡充が図られています(最新情報は当サイトで迅速に共有して参ります)。
企業・現場へのインパクト
- 採用チャネルの拡大:国内採用だけでは難しい欠員補充や新規ラインの立ち上げが現実的に。受入見込み数の再設定も行われ、制度運用の枠が広がっています。
- 育成と定着の設計が重要:分野別の試験・日本語要件、支援体制(住居・オリエンテーション・相談対応等)、業界協議会等との連携が現場の品質と安全に直結します。
- 運用面の最新化:産業ごとの受入れ体制強化や民間団体の関与など、制度運営のアップデートも進行しています。



私が関わる企業でも、自動車運送や林業の採用相談が急増しています。分野が広がったことで採用計画の選択肢が増えましたが、その分、制度理解と支援体制づくりの重要性も増しています。
これからの注目点(2025年9月時点)
- 分野・業務区分の再編・追加の行方:対象分野や業務区分は政策判断で見直しが続きます。最新の「分野別運用」や告示改正を定期チェック。
- 2号移行の範囲:2号に移行可能な分野・職種の拡充は、長期的な定着やキャリア設計に影響します。
- 試験・日本語評価の運用改善:受験機会の拡大や内容の見直しが進めば、採用計画の立てやすさが向上します。
まとめ
特定技能は、対象分野の拡大(16分野)と運用の継続的アップデートにより、企業と人材の双方に新しい選択肢を提供しています。採用側は、分野別要件・支援体制・将来の2号移行可能性まで含めた中長期の人材戦略を設計し、最新の公式情報に基づいて制度を活用していくことが重要です。



分野の追加は単なる数合わせではなく、現場の人手不足を補うための実務的な動きです。これからも制度は調整される可能性が高いので、企業も人材も最新情報を追いかけることが大切ですね。
以下に、2025年9月時点の16分野・受入れ条件比較をまとめました。
特定技能16分野一覧(2025年9月時点)
特定技能制度は2019年の12分野から、2024年3月に4分野追加され16分野となりました。 それぞれの分野で技能試験・日本語試験が必要(技能実習2号修了者は免除あり)。
介護
介護福祉士候補者として施設で従事。試験合格必須。
2号移行可
ビルクリーニング
建物内清掃業務。実技+学科試験あり。
2号移行不可
素形材産業
鋳造・鍛造・ダイカスト等。
2号移行可
産業機械製造業
機械加工・溶接など製造工程。
2号移行可
電気・電子情報関連産業
半田付け・機器組立等。
2号移行可
建設
とび・型枠・内装仕上など多数職種。
2号移行可
造船・舶用工業
溶接・塗装・仕上げなど。
2号移行可
自動車整備
分解整備・検査業務。三級整備士相当試験あり。
2号移行可
航空
手荷物取扱、機体整備支援等。
2号移行不可
宿泊
ホテルのフロント、接客、企画。
2号移行不可
農業
耕種・畜産いずれも可。季節変動あり。
2号移行不可
漁業
沿岸・沖合い漁業、養殖業務。
2号移行不可
飲食料品製造業
食品加工・製造ライン作業。
2号移行不可
外食業
調理・接客。サービス業マナー重視。
2号移行不可
自動車運送業(2024追加)
トラック・バス・タクシー運転。免許必須。
2号移行不可
鉄道・林業・木材産業(2024追加)
鉄道整備、林業、木材加工。試験準備中含む。
2号移行不可
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